目的)外科的肝灌流療法は肝悪性腫瘍に対し有効率が80%と非常に優れているが同時に非常に侵襲的である。本研究は、最小限の副作用で最大限の治療効果が期待できる非侵襲的閉鎖循環下抗がん剤灌流療法の開発および治療システムの完成を目的として行われた。 方法)当該研究期間中にブタ24匹(体重40kg)を用いて低侵襲的なIVRの技術のみを用いた同療法の実験を行った。実験内容は肝動脈・門脈・下大静脈をバルーンカテーテルにて閉塞して肝の閉鎖循環システムを作成し人口心肺装置3台を使用して30分間の抗癌剤灌流実験を行い、循環動態に及ぼす影響と抗癌剤灌流後の肝・腎・消化管等の障害の有無及び障害の程度の検討(抗がん剤灌流療法後に臓器を取り出して、病理学的に障害の程度を評価する)を行った。 結果)24匹中最初の12匹においては医療機材の不備により実験途中で血圧降下が生じ、この内7匹では実験を中途で断念した。次の7匹は改良型の機材を用いたが血圧降下は生じた。さらに機材の改良を進め残りの5匹では血圧降下は軽度で灌流システムも機能した。この5匹で肝・腎・消化管(大腸・小腸)の障害の有無を病理学的に評価した結果、肝・腎には有意な障害は見られなかったが小腸において浮腫が認められた。 考察)肝臓内抗がん剤灌流療法による循環動態に及ぼす影響および小腸の浮腫の原因は上腸間膜静脈からの血液のリターンを十分に全身系へ戻せなかったためと考察され、安全性の面から門脈血を効率よく全身系へ戻す医療機材の検討が必要であると考えられた。 結論)肝における非侵襲的閉鎖循環下抗がん剤灌流療法の基礎が完成し、臨床応用への道は開いたが安全性・有効性を含めた更なる研究の必要性があるものと考えられた。
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