本研究は、空間的線量分布に優れた最新の三次元高精度照射法である強度変調放射線療法(IMRT)を、放射線生物学の観点から理想的に行うことを目的とする。本年度の研究実績として、まず物理的な不均一線量分布が生体内で再現できているかをファントム実験等で検証した。その結果、治療計画で得られた線量とファントム内の実測線量の誤差は3%以内であることが明らかになった。IMRTは2Gyの照射に15-20分かかるため、照射中の患者の固定具内での臓器移動(intrafraction organ motion)についても検討したが、舌骨と下顎骨以外の部位では移動は少なく2mm以内であった。この成果は2002年の北米放射線学会で発表した。 IMRTでは、1回の照射時間が長いため、線量率効果がある可能性がある。SCCVII腫瘍とCHO細胞をin vitroにおいて照射し、この照射時間の延長の効果を検討した。その結果、10Gy以下の線量ではIMRTと通常照射に細胞生存率に有意差が認められず、IMRTの線量率効果は認められなかった。 肉眼的腫瘍体積(GTV)と臨床標的体積(CTV)に対する1回線量を変え照射するSimultaneous integrated boost(SIB)法のパイロット研究を、通常の放射線療法では局所制御が困難な悪性神経膠腫を対象に行なった。まず治療計画法においてはCTVをGTV周囲のドーナッツ状のCTV annulusとして入力する方法が、CTV全体を入力する方法よりも適切な治療計画が得られることが判明した。この成果も2002年の北米放射線学会で発表した。臨床的にはGTVには1回2.5Gy、CTVには1回2.0GyのSIB法で合計70Gyの照射が悪性神経膠腫に対して安全に行えた。しかしながら、この線量分割法での局所制御は不良で、さらなる1回線量増加試験が必要である。
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