研究概要 |
照射中の患者の固定具内での臓器移動(intrafraction organ motion)、毎回の治療ごとのinterfraction organ motionおよびセットアップエラーのデータに基づき、計画標的体積(PTV)マージンを求めた。IMRTを行った頭頸部腫瘍患者の骨格指標における位置誤差をシステマチックエラーとランダムエラーに分けて検討した。システマチックエラーとランダムエラー分布の標準偏差からPTVマージンを求めた。その結果、当院のPTVマージンとしては5mmが適切であった。 悪性神経膠腫を対象に肉眼的腫瘍体積(GTV)と臨床標的体積(CTV)の1回線量を変えるSimultaneous integrated boost(SIB)法の初期6例のパイロット研究の成果と治療計画法を2編発表した。その後症例数が12例と増加し、この治療成績を解析した。GTVには1回2.5Gy、周囲CTVには1回2.0GyのSIB法で合計70Gyの照射が悪性神経膠腫に対して安全に行えた。12例中7例は、IMRT後7ヵ月以内に再発した。再発した7例中5例はGTV、1例は周囲CTVから、1例は照射野外の再発であった。この線量分割(70Gy/28回)では、局所制御について満足な結果は得られなかった。 IMRTで全頸部を治療した頭頸部腫瘍33例を対象とし、その唾液腺障害の程度と再発形式を検討した。観察期間は短いが、原発腫瘍の残存あるいは再発が6例に見られた。4例はGTV中心から再発したが、2例の上咽頭腫瘍はPTV辺縁残存・再発であった。頸部リンパ節残存・再発は4例に見られ、再発の2例はPTV辺縁再発であった。対側および同側耳下腺への平均線量は24.0Gyおよび30.3Gyに軽減できた。IMRT後3-4ヵ月での唾液腺障害は、grade0,1が19例(58%)で、特に耳下腺体積の大きな患者では唾液腺障害が軽度であった。PTV辺縁再発も見られ、IMRTにおけるPTV設定には注意が必要である。
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