研究概要 |
標記研究に関して,平成14年度は以下のような研究実績をあげ,項目11に記載したような学会発表を行った. (1)肺がん集団検診で撮影した,男性1000人,女性1000人について,それぞれ現在画像と過去画像からなる合計2000枚の画像データベースを構築し,これを研究に用いて,テンプレートマッチングに基づいた患者自動認識法を開発した. (2)開発した手法が,臨床現場でどの程度役に立つのかを知ることと,PACS環境でファイリングミスが実際にどの程度発生しているのかを調べることを目的とし,共同研究者(渡辺)の所属する産業医科大学病院のコンピュータに開発した手法を移植し,臨床評価テストを開始した. (3)臨床評価テストと並行して,手法の性能改善のために,エッジ強調画像を利用する手法を開発した. (4)臨床評価テストでは,読影対象となった胸部単純X線写真と比較読影に用いられたケースが同じ患者であるのか,異なる患者であるのかを,コンピュータが自動的に認識し,その結果を,読影用モニタ上に表示した.つぎに,読影医がコンピュータの解析結果が正しかったか間違っていたかを確認し,解析を行った. 新しく得た知見: 今回の臨床評価テストにおいて対象となった1704人の胸部単純X線写真のなかで,1.3%(22/1704)にファイリングミスが発生し,その結果,異なる患者としてPACSサーバー内に保管されていることが判明した.これらのファイリングミスの原因を調べた結果,すべてのファイリングミスが,撮影時に,異なる患者のIDカードを使用したことによるものとわかった.また,開発した患者自動認識の臨床現場での性能は,ファイリングミスを正しくコンピュータが見つけ出したものが86.4%(19/22),同じ患者であるのにコンピュータが間違って異なる患者と判別したものが1.6%(26/1682)であった.これらの結果から,開発した手法が臨床現場において,ファイリングミスを見つけるのに役立つことがわかってきた.
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