研究概要 |
MRIから中脳領域の標準脳を作成するための検討と,FDOPA PET画像への応用を検討した. (A)静磁場強度3Tおよび1.5Tで撮像された中脳部分の磁気共鳴画像を検討した、灰白質と白質のコントラストを上げるのに最適とされるinversion recoveryによるMRI T1強調画像を用いた場合,大脳皮質,被殻,尾状核,淡蒼球,視床の描出には最適であり,特に視床では,そのsubnucleusまで描出する事が可能であった.しかし,本研究の目標であった縫線核は,明確に描出することが出来なかった.そこでFDOPA,FDGのPET画像などMRIとは異なる組織コントラストを示す画像,組織解剖学の知見を組み合わせることで,縫線核や青斑核の相対的な位置を推定した.そして,解剖学的に標準化された脳地図の中に位置づけることを行った. (B)中脳領域のMRI画像に関する解剖学的標準化の精度を検討した.その結果,中脳領域おける解剖学的標準化の誤差は,最大で5-7mm,FWHMで2-3mmだった.これは,PETによる神経核イメージングのためには,十分な空間分解能である. (C)パーキンソン病(PD)患者10例,同年齢の健常対照者15例の[F-18]FDOPA PETのデータを用いて中脳領域の神経核マッピングを行った.中脳の解剖学的標準化地図と対照した結果,PDにおいて,吻側中脳正中領域(吻側縫線核),腹側被蓋野,第四脳室底部外側部(青斑核)でFDOPA取り込み率(Ki)値の軽度の上昇を検出することができた.また,線条体のうち,背後側でKiの低下があった.また,個人間のばらつきは大きいが,腹側部〜側坐核においてKiが亢進する傾向にあった.この結果は,パーキンソン病患者における,ドーパミン作動性中脳辺縁系の機能亢進を裏付け,セロトニン系関与の可能性を示唆するものである.
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