研究概要 |
(1)地域医療機関と連携し,中高齢期難治性重症うつ病と緊張型統合失調症を対象とする治療システムを構築した. (2)地域医療機関より紹介され,本システムを利用した中高齢期難治性重症うつ病患者のうち,急性期ECTの適応となった連続症例(N=21)において,短期的反応率81%(17/21),継続薬物療法下での6ヵ月間寛解維持率53%(9/17),初老期群・高齢期群間で反応率・寛解維持率に差はないが,併存する身体疾患が急性期ECT後の残遺症状と再燃率増大に関与することを示した.さらに,継続薬物療法下での再燃例8例中2例は薬物の増量・変更に反応して最終的に6ヶ月間寛解維持に成功し,残る6例に対しては継続ECTを実施し,50%(3/6)の寛解維持率を得た.すなわち本システムを利用し中高齢期難治性重症うつ病の67%(14/21)が,6ヵ月以上の寛解維持に成功し,治療システムの有用性が示唆された. (3)Vascular Depression(VD)11例とnon-VD9例で治療転帰を比較したところ,短期的反応率には差はないが,急性期ECT後の残遺症状と再燃率はVD群で増大する傾向を認め,前部大脳辺縁系領域の局所脳血流低下所見の改善が有意に不良であることが示された. (4)地域医療機関より紹介され,本システムを利用した中高齢期難治性重症緊張型統合失調症のうち,急性期ECTの適応となった連続症例(N=9)において,短期的反応率100%(9/9),抗精神病薬による継続薬物療法下での6ヵ月寛解維持率44%(4/9),再燃例5例に継続ECTを実施し60%(3/5)の6ヶ月寛解維持率を得た.すなわち本システムを利用した中高齢期難治性重症緊張型統合失調症の67%(14/21)が,6ヵ月以上の寛解維持に成功し,治療システムの有用性が示唆された.
|