研究概要 |
薬物治療が困難な中高齢期のうつ病に対して,急性期ECTは80%以上の寛解率を示すこと,急性期ECTで寛解した後に継続薬物療法での6ヶ月寛解維持率は約50%であること,継続薬物療法下での再燃例に対する継続ECTの寛解維持率は50%程度であることが示された。年齢は急性期ECTの反応率やECT後の再燃率に影響しないが,併存する身体疾患は,急性期ECT後の残遺症状の出現や易再燃性に影響する傾向が認められた.中高齢期の緊張型統合失調症については,急性期ECTは100%の寛解率を示したが,急性期ECT後の継続薬物療法下での6ヶ月寛解維持率は50%以下であり,再燃例に対する継続ECTの寛解維持率は60%程度であった.ECTを安全かつ効果的に用いるためには,治療前評価と適応基準,インフォームド・コンセント,治療手技,スタッフと治療環境,教育の問題を網羅したガイドラインを策定し,医療機関では,これを遵守していくためのシステムを構築していく必要がある.本研究では,内外のECTの臨床研究を展望し,治療ガイドラインの基礎資料を提示した. 薬物治療が困難な中高齢期のうつ病や緊張型統合失調症は,重症化してしばしば生命的な危急事態に陥りやすい.また,寛解後にも再燃しやすいという特性があり,治療には総合的な病態解析とともに,病態を十分考慮した長期的な継続維持治療が必要となる.こうしたニーズに対応できる地域医療システムの構築は急務の課題であるが,本研究では,総合病院における中高齢期の重症精神障害に対応できる包括的医療システムが,薬物治療が困難な重症うつ病や緊張型統合失調症の長期的治療に有用であることを示している.
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