石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病の生体無機化学的研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570916
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 竹内 徹 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (20236425)
• キーワード: DNTC / SRXRF / 鉛 / カルシウム

研究概要

本疾患Diffuse neurofibrillary tanges with calcification (DNTC)は、臨床症候および神経病理学的所見において、Alzheimer病(AD)、Pick病双方に一部類似しながらも、さらに生理的範囲を超えた石灰沈着を伴うことが知られている。本研究では、脳内カルシウム沈着と金属元素との関連を生体無機化学的立場から検討してきた。本年度は、DNTC3例、AD1例、正常例1例の死後脳の前頭葉、側頭葉、後頭葉の各皮質の一部を放射光X線分析(SRXRF)法(KEK BL4A)を用いて分析した。測定条件は入射X線のエネルギーを14.9eV,ビーム径を6μmに設定し、分析試料には20%リン酸緩衝ホルマリン固定のパラフィン切片および-80℃凍結保存脳から作製した4%パラフォルムアルデヒド固定凍結切片を用いた。DNTC3例とも前頭葉と測頭葉の血管周囲に高濃度の鉛、水銀、亜鉛、カルシウムが検出された。SRXRFのマッピングによりカルシウムと鉛の分布の一致が認められた。しかし、後頭葉ではこのような顕著な状態は認められなかった。また、他の症例の各部位から高濃度の鉛は検出されなかった。以上の結果からDNTCの石灰沈着主として鉛の蓄積により増強されるものと思われた。鉛は古くから中枢神経系において毒性を発揮することが推測されている元素であり、そのメカニズムとしてミトコンドリアの機能障害や他の2価のイオンのタンパク質に対する結合妨害、細胞膜の破壊、素活性の阻害、血管壁の透過性増強などが考えられている。本研究においては特にDNTCの前頭葉と側頭葉に鉛の顕著な蓄積が認められ、またこの現象がカルシウムの沈着と相まっていることから鉛イオンがDNTCの疾患特異性に深いつながりを持つ可能性が疑われた。

研究成果

• [文献書誌] R.Ishihara, T.Kawakami, Y.Mizuno, T.Takeuchi, A.I.Ektessabi: "Neuronal degeneration from the perspective of abnormal distribution of cellular metallic elements in cases of Alzheimer's disease"Biomedical research on trace elements, suppl.Ohsaka. 14(2). 107-107 (2003)
• [文献書誌] R.Ishihara, T.Kawakami, Y.Mizuno, T.Takeuchi, A.I.Ektessabi: "Neuronal degeneration from the perspective of abnormal distribution of cellular metallic elements in cases of Alzheimer's disease"Biomedical research on trace elements. 14(3). 204-209 (2003)
• [文献書誌] N.Hashimoto, T.Takeuchi, R.Ishihara, K.Ukai et al.: "Gilial fibrillary tangles in diffuse neurofibrillary tangles with calcificatrion"Acta Neuropatholol. 106. 150-156 (2003)
• [文献書誌] K.Ishihara, A.I.Ektessabi, T.Kawakami, Y.Mizuno, T.Takeuchi: "Investigation on metal elements in the brain tissues from DNTC patients"9th International conference on electronic spectroscopy & structure, abs, Sweden. 244-244 (2003)
• [文献書誌] A.I.Ektessabi, T.Kawakami, R.Ishihara, Y.Mizuno, T.Takeuchi, et al.: "Investigation on metal elements in the brain tissues from DNTC patients"J Electron Spec & Related Phenomena. (in press).