研究課題
基盤研究(C)
自殺に至る生物学的背景として、セロトニン(5-HT)神経系の低活性が想定されている。セロトニン神経系の遺伝子多型、モノアミン神経伝達に影響を与え気質に関与すると孝えられる機能的遺伝子多型と自殺との相関研究を行った。その結果、セロトニン神経系遺伝子多型(TPH : A-6526G・A218C・5HTT-VNTR、5HT1A受容体:Pro16Leu・Gly272Asp、5HT1B受容体:G861C、5HT2A受容体:A-1438G)ならびにモノアミン神経伝達に影響を与え気質に関与すると考えられる機能的遺伝子多型である5HTT-LPR、MAOA-uVNTR、DRD4:-521C/T多型では、自殺既遂者群と健常対照群における遺伝子型ならびに遺伝子頻度の分布に有意な差を認めなかった。一方、COMT:158Val/Met多型では、男性におい下のみ遺伝子型の分布に有意差がみられ、遺伝子頻度でも高活性を示すとされるG(Val)アレルが自殺既遂者群で少ない傾向を認めたことから、男性では高COMT活性が自殺に抑制的に働いていることが示唆された。さらに、上記多型間の相互作用を検討したところ、男性においてのみ、5HTT-LPRとMAOA-uVNTRおよび5HTT-LPRとCOMT:158Val/Met多型で、遺伝子型の組合せの分布に有意差を認めた。性差を考慮してモノアミン神経伝達に影響を与えるいくつかの機能的遺伝子多型の相互作用を解析することは、自殺に関連した神経化学的失調や気質を明らかにするために有用であると考えられた。
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