平成11年9月、診断から、精神療法、ホルモン療法、手術療法へと進む包括的治療を「性同一性障害に対する包括的治療の臨床的研究」として岡山大学医学部倫理委員会に申請を行い、平成12年3月、承認された。現在、泌尿器科、産婦人科、形成外科とも連携しながら、精神療法、ホルモン療法、手術療法を行っている。 平成15年3月末までに、岡山大学医学部附属病院精神神経科を性別の違和感を主訴に329人の患者が受診しており、そのうち性同一性障害患者と考えられる症例は312例である。現在、倫理委員会から53例のホルモン療法の承認を得ており、全例でホルモン療法を開始している。また、16例の手術療法の承認を得て、そのうち11例に性別適合手術(乳房切除術を含む)を行っている。 精神神経科に於いては精神療法を行っているが、知能検査、自我態度スケール、ラザルス式ストレスコーピングイベントリ、バウムテストの心理検査を施行し、患者プロフイール、社会的背景等から各患者群に分類している。さらに、知能検査(WAIS-R)を施行した87名の結果を男性例、女性例ごとに教育歴を分けて検討した。その結果、教育歴13年以上の群の男性例で言語性IQが有意に高かった。言語性IQ、動作性IQの各下位項目においては、教育歴12年以下の群において「知識」で男性例が、「符号」で女性例が有意に高く、教育歴13年以上の群において「理解」で男性例が有意に高かった。これらの結果は身体的な性の特徴に一致していた。
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