研究概要 |
ストレス性精神障害の病態形成に関連するストレス性のアポトーシスを含む細胞変性の機序に、c-Jun N-terminal kinases (JNKs)/c-Jun情報系がどのように関与しているかを明らかにする目的から、平成14・15年度に引き続き本年度は以下の研究を行った。 これまでの研究成果から拘束ストレスによってラット大脳皮質前頭部(FC)でのJNKsリン酸化の減弱とATF-2リン酸化の減少を検出したため、ATF-2リン酸化に密接に関与するp38の発現・リン酸化におよぼすストレスの影響を検討した。 急性拘束ストレス(ARS)(15,30,60,90,120分)負荷によるFC・海馬(HP)のp38発現・リン酸化の変化を、Western blot法にて検討した。その結果FC・HPでは、拘束ストレスによるp38発現・リン酸化に、有意な変化は検出されなかった。慢性拘束ストレスによる発現の変化をも検討したが、特に有意な変化は得られなかった。 昨年度に引き続きストレスによるATF-2リン酸化の減少の分布について、抗リン酸化ATF-2抗体及び抗neurofilament抗体と抗GFAP抗体を用いた三重免疫組織染色を行った結果、FCのニューロンの核内での発現が減少しており、グリアでの発現は検出されないことがわかった。 ARS・慢性拘束ストレスによるJIP-1b, JIP-2a mRNA発現への影響を、海馬にてreal-time PCR法にて計測したが、有意な差は検出されなかった。 これまでの3年間の研究成果から、様々なストレス負荷によってJNKs/c-Jun情報系の機能の減弱することが解明された。FCでの本情報系の減弱は、ARS負荷初期にはJNKリン酸化により、ARS後期はprotein phosphatases活性の亢進により引き起こされることが示唆された。HPでは母子分離によって、成長後ARS負荷によってJNK2発現減少による、本情報系の機能低下の引き起こされることが示された。このような結果は、ストレスによって脳内Bcl-2やglucocorticoid receptorのリン酸化変動を介した細胞障害の引き起こされる可能性を提唱している。
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