研究課題/領域番号 |
14570928
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研究機関 | 香川医科大学 |
研究代表者 |
竹内 義喜 香川医科大学, 医学部, 教授 (20116619)
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研究分担者 |
宮武 良輔 香川医科大学, 医学部附属病院, 助手 (50301320)
松本 由樹 香川医科大学, 医学部, 助手 (90335844)
三木 崇範 香川医科大学, 医学部, 助教授 (30274294)
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キーワード | アルコール依存症 / 脳内報酬系 / 血管内皮 / タウリン / 保護 / 修復作用 / 海馬神経細胞 |
研究概要 |
アルコール依存症は、精神依存を経て身体依存が形成されることにより成立するとされている。本研究においては、アルコール依存症の成立に深く関与するとされている脳内報酬系の動態変化に着目して、神経細胞とグリア細胞の変化を中心に解析した。 1-アルコール依存症実験動物モデルの作製と海馬神経細胞の解析 Wistar系雄ラット及び、BALB/Cマウスに液体飼料に、エタノールを5%に調製して、それぞれ3ケ月間、3-5日間投与することにより、アルコール依存症実験動物モデルを作製した。本年度の研究では、主に海馬の動態変化に着目した。アルコール依存症モデルの海馬のアミノ酸分析の結果、コントロール動物に比べて、タウリン濃度が有意に上昇を認めた。アストログリアのマーカーであるGFAPの免疫染色では、細胞の突起と細胞体の肥大が観察された。共焦点顕微鏡による海馬領域の観察では、海馬裂周囲の比較的太い血管の内皮細胞にタウリンの発現を認めた。このことは、血管内皮がタウリン濃度の上昇に深く関わっていることを意味する。一般にタウリンは、脳の虚血やてんかんなどの病的な状態で、濃度の上昇が認められることから、アルコールの脳障害作用により同様な減少が見られたものと推測される。また、タウリンには神経細胞の保護/修復作用が認められていることから、アルコールによる脳障害作用の防御反応の1つとして現れたものと言える。 2-生後早期のアルコール曝露の海馬への影響解析 上記の研究に併せて、脆弱性と可塑性に特殊性を呈する発達途上期の神経系に対して以下の研究を行った。10日齢から15日齢まで6日間連続して、1日あたり3時間アルコール蒸気に曝露した(血中アルコール濃度;約430mg/dL)-胎児性アルコール症候群(Fetal Alcohol Syndrome, FAS)モデル動物。このモデル動物を16日齢と30日齢において海馬の神経回路網への影響を解析した。このモデル動物においては、海馬歯状同門において、16日齢では体積と神経細胞の減少を認めたが、30日齢までにはこの減少を認めなかった。錐体細胞は、いずれの日齢においても有意に減少していた。以上の結果は、アルコールが海馬神経細胞ネットワークに影響を与え、これがアルコール依存症成立に関与していることを示唆する。
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