研究概要 |
今年度我々は、前年度に引き続いて次の様な実験を行った。まず、生後7日目の仔ラットの両側腹側海馬をイボテン酸を用いて傷害し幼若期腹側海馬傷害ラットを作成した。対照群には人工脳脊髄液(ACSF)を注入した。生後35日目(PD35)に両群のラットを赤外線式行動量測定装置付きのアクリルケースに入れ、habituation(HAB)60分間、1.5mg/kg-methamphetamine(MAP)腹腔内投与後90分間の移所運動量を測定した。その後、生後42日目にラットの背側皮下に1mMグリシン入りの持続注入ポンプ(alzet ; osmotic pump,2ml/2week model)を埋め、左側脳室内に2週間持続投与した。グリシンの持続投与が終了する生後56日目(PD56)にHAB60分間、1.5mg/kg MAP腹腔内投与後90分間の移所運動量を測定した。傷害-グリシン投与群の移所運動量は平均がPD35-HAB=1,875cm,PD35-MAP=15,467cm,PD56-HAB=683cm,PD56-MAP=9,668cmであり、対照-グリシン投与群の移所運動量はPD35-HAB=840cm,PD35-MAP=4,936cm,PD56-HAB=1,050cm,PD56-MAP=10,867cmであった。幼若期海馬傷害ラットは通常PD56の移所運動量が対照群に比べて有意に増加するものであるが、PD56の傷害-グリシン投与群には有意な移所運動量の増加は見られなかった。このことから、グリシンの持続脳室内投与が、モデルラットの異常行動発現を抑制する可能性があると考えられた。
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