研究概要 |
実験動物は生後50日齢のWistar系雄性ラットを用いた。動物を透明なプラスティック容器(60×40×35cm)内にトルエン(2ml,2000ppm)を吸収させたろ紙の入ったシャーレを置き、その中に飼育ケージごと動物を3時間ずつ吸入曝露させた。トルエン吸入曝露させた群を単回投与(急性曝露)と2週間連続投与(慢性曝露)のものを作製し、対照動物も同様の処置をトルエンの入っていない別の容器を用いて同時に行った。また、容器内のトルエン濃度・酸素濃度も同一条件にした。 4%パラホルムアルデヒドで灌流固定後脳を摘出し、クリオスタットにて切片を作成した。synaptophysinに対する特異抗体(1次抗体)を室温で4日から7日間反応させたのち、型通りのABC法をおこない光学顕微鏡を用いて観察した。 その結果、トルエン急性曝露群において、対照群に比してsynaptophysin免疫反応が大脳皮質前頭前野,側頭葉皮質,側坐核で増強する傾向が認められた。また慢性曝露群においても側頭葉皮質,側坐核の一部で増強する傾向が認められた。これらが、依存等に関与するドーパミンA1Oニューロンの分布に合致することから、有機溶剤による依存の形成にsynaptophysinが関与していることを明らかにした。 この、synaptophysin免疫反応構造を定量形態学的に測定したところ有意な増加であることを確認した。併せて、RT-PCRやノーザンブロットを用いて、synaptophysin mRNAの発現量の増加が、上記各部位で認められた。
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