研究概要 |
【方法・対象】統合失調症の統語機能について検討する目的で,かき混ぜ文を処理中の事象関連電位(ERP)を測定し,健常対照群と比較を行った。対象は,統合失調症患者11名(平均年齢33.1±6.7歳,男性4名,女性7名),健常対照群20名(平均年齢33.5±8.7歳,男性9名,女性11名)である。以下のようなかき混ぜ文(移動なし,中距離移動,長距離移動)をそれぞれ80文作成し,1句毎に提示時間450ms,刺激間間隔450msで連続的に視覚提示した。各文提示後に,名詞句と動詞からなる短文を提示し,正否についてボタン押し反応を求めた(正否の比率は1:1)。ERPは頭皮上64部位から導出し,反原応試行について,1句毎に刺激前100msの平均電位をベースラインとして,波形を求めた。Fillerに相当する「〜を」,gap前の「〜に」に対する,中・長距離移動文と移動なし文に対するERPを各群毎に比較を行った。 a)校庭で 女の子が 男の子に 水を かけた。(移動なし) 男の子にかけた ○ b)校庭で 女の子が 水を 男の子に_かけた。(中距離移動) 男の子がかけた × c)校庭で 水を 女の子が 男の子に_かけた。(長距離移動) 女の子をかけた × 【結果】ERPについては,以下の結果が得られた。 【table】 【考察】gap前におけるP600振幅が健常者では移動距離に照応して認められたのに対して,患者群では移動文に対するP600振幅の増大が認められず,文構造の統合に障害があることが示唆された。
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