機能的MRIを用いた精神分裂病とてんかん精神病に共通する神経回路異常に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570946
• 研究機関: 日本大学
• 研究代表者: 松浦 雅人 日本大学, 医学部, 助教授 (60134673)
• 研究分担者: 大久保 起延 日本大学, 医学部, 講師 (90328716) ; 泰羅 雅登 日本大学, 医学部, 助教授 (50179397) ; 小島 卓也 日本大学, 医学部, 教授 (40014203)
• キーワード: 統合失調症 / 脳内神経回路異常 / 追跡眼球運動 / アンチサッケード / 探索眼球運動 / 機能的MRI / 前頭葉・基底核・視床回路 / 前頭葉機能低下

研究概要

本年度は統合失調症の脳内神経回路異常を中心に研究を行った。統合失調症は脳に粗大な病変がなく、明らかな神経病理学的所見を欠くため、脳内神経回路の機能障害による疾患と考えられる。これまでに追跡眼球運動、アンチサッケード、探索眼球運動などの各種眼球運動異常が報告され、これらは統合失調症の遺伝的脆弱性の生物学的指標と考えられている。機能的MRIは時間分解能と空間分解能にすぐれ、侵襲性がない点ですぐれる。われわれはこれを用いて各種眼球運動遂行中の脳賦活部位を調べ、統合失調症の背景にある神経回路障害について検討した。インフォームドコンセントの得られた統合失調症患者を対象に、日本大学医学部倫理委員会の承認を得て以下の三つの研究を行った。1)追跡眼球運動課題に良好な遂行成績を示した統合失調症患者11例と健常者11例を対象に、追跡眼球運動課題遂行中の機能的MRIを撮像した。その結果、統合失調症患者は健常者で賦活される前頭前野、前部帯状回、線条体の賦活が低下していた。2)統合失調症患者をアンチサツケード課題の遂行成績が良好な群9例と不良な群9例に分け、健常者9例と比較した。統合失調症の遂行成績不良群では前頭前野や前頭眼野の賦活が低下し、また統合失調症群はいずれも遂行成績とは無関係にレンズ核と視床の賦活が低下していた。3)ベントンの図版およびそれと一部異なった図版を比較照合する探索眼球運動課題を行い、良好な遂行成績を示した統合失調症患者10例と健常者10例を比較した。その結果、統合失調症患者は健常者で賦活されるレンズ核と視床の賦活が低下していた。以上より、統合失調症には前頭葉・基底核・視床神経回路の機能障害が存在し、基底核・視床の機能低下が一次的に存在し、その結果前頭葉の機能低下をきたして各種眼球運動障害が生じると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Matsuura M et al.: "A multi-center prevalence study on psychiatric disorders in new referrals of epilepsy in Japan"Epilepsia. 44:107-114. 107-114 (2003)
• [文献書誌] Matsuura M et al.: "A polydiagnostic and dimensional comparison of epileptic psychoses and schizophrenia spectrum disorders"Schizophrenia Research. (In press). (2003)
• [文献書誌] Takahashi S, Matsuura M, Kojima T, et al.: "Family study of schizophrenia and mood disorder"Nihon University Journal of Medicine. 44. 167-171 (2002)
• [文献書誌] Adachi N, Matsuura M, et al.: "Are interictal and postictal psychoses distinct clinical entities?"Epilepsia. 43. 1574-1582 (2002)
• [文献書誌] Adachi N, Matsuura M, et al.: "Frequency and age-related variables in interictal psychoses in localizatin related epilepsies"Epilepsy Research. 48. 25-31 (2002)
• [文献書誌] Matsukawa Y, Matsuura M, Kojima T, et al.: "Patients with systemic lupus erythematosis show a normal responsive search score in exploratory eye movement analysis : comparison with schizophrenia"Annals of Rheumatic Disorders. 61. 748-750 (2002)
• [文献書誌] Matsuda T, Matsuura M, Ohkubo T, Taira M, Kojima T, et al.: "Recent Advances in Human Brain Mapping"Simultaneous recording of EEG and functional MRI. 351-355 (2002)