研究概要 |
本研究では統合失調症(精神分裂病)の探索眼球運動を指標としたゲノム・スキャンの結果に基づく,統合失調症と関連する22q11.2領域近傍の遺伝子解析を行った。昨年度は統合失調症の家系でbeta-adrenergic receptor kinase 2(ADRBK2)遺伝子とpeptidylprolyl isomerase (cyclophilin)-like 2(PPIL2)遺伝子を調べ,統合失調症は関連しないことが示唆された。今年度は短腕末端から15.967Mb〜16.063Mb,16.129Mb〜16.527Mb,16.989Mb〜17.101Mbの3領域においてハプロタイプTDTにより統合失調症と関連が示唆され,この過程でPRODH遺伝子を含む約100kbの欠失を持つ1家系を検出した。PRODH遺伝子欠失の簡易スクリーニング法によりコントロール900人,統合失調症500人,気分障害100人を検討したが,PRODH遺伝子の欠失は統合失調症と関連しないことが示唆された。これらの遺伝子のやや近傍で,22q12.3領域における約20kb間隔の多型による連鎖不平衡(LD)の解析をし,RBM9遺伝子のプロモーターから第3エクソンまでに大きいLDブロックが認められ,APOL4遺伝子で小さなLDブロック,APOL3とMYH9に弱いLDブロックがみられ,その他にはLDブロックはなかった。この領域の関連解析の結果,APOL1〜L4遺伝子のセントロメア側のD22S278及びその付近のSNPとテロメア側のD22S283で関連がみられた。D22S278はRBM9(RNA binding motif protein 9)遺伝子の第1イントロンに存在するため,この遺伝子の第1,2エクソン及びその上流約1.2kbについて変異検索を行い,約1.2kb上流と第1イントロンに1つずつ多型を検出した。この多型のTDTの結果、SNP4、D22S278およびD22S283で統合失調症と関連が示唆された。以上から,22q11.2領域における統合失調症との連鎖不平衡により3領域において統合失調症との関連が示された。PRODH遺伝子の欠失は統合失調症のリスクを高めないことが示唆された。また,22q12.3領域ではAPOL1,L2,L3,L4遺伝子の近傍の多型と統合失調症とが関連することが考えられた。
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