研究課題/領域番号 |
14570951
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
磯谷 俊明 関西医科大学, 医学部, 講師 (10223059)
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研究分担者 |
木下 利彦 関西医科大学, 医学部, 教授 (20186290)
柳生 隆視 関西医科大学, 医学部, 講師 (10239733)
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キーワード | アルツハイマー型痴呆 / 脳波 / 塩酸ドネペジル / Global Field Power / Low Resolution Electromagnetic Tomography / 複雑性 / 国際情報交換 / スイス:ドイツ |
研究概要 |
1.本研究の対象となった未服薬アルツハイマー型痴呆患者を、Functional Assessment Staging (FAST)日本語版の得点に基づいて、重症群(FAST得点:5-7=中等度・やや高度・高度)11名(男4名、女7名、年齢:68.9±12.5歳)と軽症群(FAST得点:4=軽度)18名(男1名、女17名、年齢:71.6±7.8歳)に分類し、健常者群(FAST得点:12=正常・年齢相応)15名(男4名、女11名、年齢:73.1±8.2歳)との3群間で、脳電位空間全体の強度(エネルギー量)を意味するGlobal Field Power (GFP)を比較した。その結果、重症群のalpha-1(8.5-10Hz)・alpha-2(10.5-12Hz)・beta-1(12.5-18Hz)・beta-2(18.5-21Hz)・beta-3(21.5-30Hz)の各帯域こおけるGFPが、健常者群より小さく(p<0.05)(これらの帯域のLORETA解析では、alpha-1・alpha-2・beta-1で海馬傍回、beta-2で前帯状束、beta-3で後帯状束における重症群の電流密度が低かった)、さらにalpha-2帯域では軽症群より小さかった(p<0.05)。また、軽症群のbeta-3帯域におけるGFPが、健常者群より小さかった(p<0.05)。重症群でのalpha波を含めた速い周波数成分のGFP減少は、脳機能の広汎な低下を反映していると考えられる。最も速い周波数成分であるbeta-3帯域のGFP減少はアルツハイマー型痴呆の初期診断に寄与すると予測される(これは、特に初期・中期に有用な塩酸ドネペジル治療により改善した軽症群で、beta-3帯域のGFPが増大したという我々の結果に矛盾しない)。また、beta-2帯域のGFP減少は、アルツハイマー型痴呆の重症度を表わす指標になる可能性がある。 2.次に、我々は、軽症群と健常者群の間で、脳電位空間全体における複雑性の指標global Omega-complexity (Ω)の値を比較した。結果は、軽症群のΩ値(5.9±1.2)が、健常者群(4.9±1.3)より大きかった(p<0.05)。このことは、軽症アルツハイマー型痴呆患者では、神経細胞の変性・脱落が、脳の情報処理過程の障害をもたらし、神経活動の協調性が低下したことを示唆する。
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