研究概要 |
ニューロペプチドY(NPY)遺伝子に9箇所で多型を同定した。9多型について212例の統合失調症と199例の対照でcase-control studyを行ったところ、プロモーター領域の-485C>T(P=0.004,OR=1.52,CI=1.14-2.03),イントロン1のIVS1-52C>G(P=0.02,OR=1.46,CI=1.06-2.01),エクソン2の150A>G(P=0.05,OR=L33,CI=0.99-1.78)で有意な関連を認めた。 -485C>Tはプロモーター領域に位置するので、-485C>Tを含む786bpを導入したpGL3basicをIMR-32とCOS-1へトランスフェクションしてルシフェラーゼ・アッセイを行ったところ、神経細胞由来のIMR-32では-485Cを含むコンストラクトはコントロールの約2倍の転写活性を示し、-485Tは-485Cのおよそ40%を示した。-485Tと-485Cの転写活性には有意な差が認められた(P=0.02)。非神経細胞由来のCOS-1では、-485T,-485Cともにコントロールの約半分の活性を示し、両者間に有意な差は認められなかった。 100名の患者にPANSSを用いて重症度を評価し、-485Cと-485Tのそれぞれのホモ接合体患者を比較したところ、陽性症状ではP1の妄想(P=0,01)とP5の誇大性(P=0.02)でTのホモ接合体患者がCのホモ接合体患者より有意に得点が高かった。陰性症状ではN6の会話の流暢性欠如でT/Tの患者がC/Cの患者より有意に得点が低かった(P=0.04)。 以上の結果は、NPYの低下が統合失調症の病態に関与することを分子遺伝学的に支持した初めての証拠であり、-485Tは統合失調症のリスクファクターであることが示唆された。
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