研究概要 |
不安及び不安障害に関する生物学的マーカーの臨床研究を実施した。本年度は不安を中心に検討した。対象は、1)精神科で治療を受けている精神疾患患者19例、2)婦人科にて腫瘍などの手術のために入院治療を受けた女性患者25例である。対象に対して不安の定量化を行うためにState and Trait Anxiety Inventory (STAI)を実施した。婦人科疾患には、手術前後に実施した。一方、末梢血液20ccを採血し、血小板に含まれる末梢型ベンゾジアゼピン系受容体の結合能を測定し、STAIのState Anxiety, Trait Anxietyとの相関関係を統計的に検討した。その結果、精神疾患患者群では、両者に有意な相関はみられなかったものの、10%水準での傾向はみられた。婦人科疾患患者群でもそれに近い結果が得られた。精神疾患患者群では、抗不安薬などのベンゾジアゼピン系薬剤の服用が影響が考えられた。また婦人科疾患患者群では、標準的な不安尺度では計り得ない他のさまざまな不安が関与しているので、明確な有意差として結果が得られなかった可能性がある。それと同時に行った一般健康人では、両者の間に有意な相関がみられ、末梢型ベンゾジアゼピン系受容体の結合能が、不安との間に相関し、生物学的マーカーになり得る可能性が示唆された。来年度以降は対象の選択をより厳密に行い、不安及び不安障害に関する生物学的マーカーの臨床研究を実施していく予定である。
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