研究概要 |
TNF-αは赤血球造血を抑制する一方で,非赤芽球系細胞に対して増殖刺激として働く.これらの非赤芽球系細胞は従来,顆粒球・マクロファージ系であると考えられており,その性状については不明な点が多い.申請者は,interleukin-3, stem cell factor, erythropoietinを用いて純化ヒトCD34+細胞から赤芽球系への特異的分化誘導を行う過程で,TNF-αは、glycophorin A(GPA:赤芽球系特異的表面抗原)陽性細胞の発生を抑制するとともに非赤芽球系細胞(GPA+細胞)の増殖を促進すること,また,GPA-細胞とGPA-細胞が凝集塊を形成しながら増殖することを発見した.さらに,これらのGPA-細胞が樹状細胞からなること,なかでもCD11c陽性細胞群が同時に発生した自己のGPA+死細胞と選択的に接着して自己細胞成分を取り込むことを発見した.これらの事実は,その後の自己抗原提示を示唆する.TNF-αは炎症や組織損傷時に最も早期に増加するサイトカインの一つである.従って本研究は,すべての急性期反応が骨髄における自然免疫の急速な発動を促し,自己抗原による自己免疫や免疫寛容の成立に関与することを示唆する.これまでにその成果の一部を報告した(Exp Hematol 30:1238-1247,2002).自己抗原の取り込みについては現在,投稿中である.現在,樹状細胞による抗原提示上抗原ペプチドに研究を進展させている.本研究を通して,造血器疾患に限らず,自己免疫疾患の発症機序の本態に迫りたい.
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