本年度は、ATL細胞における高いNF-kappaB活性がATL細胞の生存に必須であることを確認し、つぎにその活性化がIKK複合体もしくはそれ以前の段階で起こっており、ごく最近注目されはじめた新しいNF-kappaB活性化経路にょるものであることをっきとめた(論文投稿中)。複数の新鮮ATL細胞、ATL由来腫瘍細胞株、in vitro HTLV-I感染T細胞株、コントロールとしてHTLV-1が感染していないヒトT細胞株をもちいて、IKK複合体の活性化様式を生化学的、分子生物学的手法を駆使して解析し、ATL由来細胞ではIKK複合体の活性化がおこっており、より強く活性化されているキナーゼサブユニットがIKK1であることが判明した。また、申請者が1998年に発見報告したIKK複合体のもうひとつの必須分子NEMOの変異体をもちいた一過性遺伝子導入法により、ATL由来細胞ではTaxを発現するHTLV-1感染T細胞株と異なって、IKK活性化をNEMOに依存していないことがわかった。しかも、ATL由来細胞株ではNFKB2p100の発現とその分解によるP52の発現が亢進していた。これらの結果は、昨年我々が報告したNEMO非依存性NF-kappaB活性化経路がATL細胞でも活性化していることを示しているが、IKK1がいかにして活性化されているのかは依然として不明である。その上流に位置するMAPKKKファミリーの活性や細胞膜表面でのサイトカイン受容体発現などに的を絞って、ATLにおけるIKK1活性化の原因を明らかにしなければならない。
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