研究概要 |
ATL細胞における恒常的NF-κB活性化では、(1)IκB蛋白質がリン酸化されている(2)その原因が細胞質でのIκB kinase(IKK)複合体活性化にある(3)その活性化がIKK2、NF-κB Essential Modulator(NEMO)には依存せず、IKK1に依存する非定型的活性化経路によって担われている(4)その結果NF-κB2/p100のプロセッシングによるp52発現が亢進しているということを解明し論文として発表した(Neoplasla,2004) 本研究ではまず、ATL細胞においてはHTLV-I Taxの有意な発現が見られないことから、IKK複合体の恒常的活性化メカニスムがTaxによる場合とどのように異なるかに着目した。Taxの場合、NEMOに依存して主にIKK2が活性化されるという他の研究者の報告がある。一方、ATL細胞ではIKK複合体の活性化はNEMOやIKK2の変異体では抑制されず、IKK1の変異体で抑制された。しかも、IKK複合体の活性化様式が両者で異なることが、蛋白合成阻害剤やarseniteを用いた実験でも明らかとなった(論文投稿中)。しかしNF-κB2/p100のプロセッシングによるp52発現誘導という結果は非常によく似ており、ATL細胞はTaxを発現せずに同様なNF-κB活性化を起こしていると言える。以上の結果にもとづいて私は、CD8T細胞の標的となりやすいTaxの機能を細胞側変異で肩代わりすることができれば、腫瘍細胞としての増殖に有利であり、そのような細胞が最終的にATLを引き起こす、という仮説を提唱した。ATL細胞で恒常的NF-κB活性化の原因となっている変化を同定することは、この難治性白血病の有効な治療法開発の基盤となると期待する。
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