BCL6はリンパ腫発症に関わる遺伝子として申請者により発見された遺伝子でzinc-finger proteinをコードする。本研究はBCL6タンパクのアセチル化がBCL6の機能に与える影響、BCL6強制発現の実験などから、BCL6の機能やそのリンパ腫発症における役割をあきらかにしようとするものである。 本研究において、BCL6がHistone acetyl-transferaseのp300と会合し、アセチル化を受けること、アセチル化を受けるのはBCL6タンパクの中央部分であること、アセチル化されたBCL6は転写抑制能が減弱することを発見した。 また、同じHistone acetyl-transferaseであるP/CAFとも会合することが示唆された。 また、胚中心B細胞由来の細胞株DaudiおよびRajiに強制的にBCL6を発現させ、抗癌剤によるアポトーシスにBCL6が与える影響について検討した。 BCL6の強制発現により、抗癌剤Etoposideによるapotosisは有意に抑制された。また、BCL6の変異体BCL6-Ala333/343はproteasomeによるタンパク分解を受けないが、これを強制発現させたRaji細胞においては、apoptosisは著明に抑制された。DaudiにEtoposideを作用させると、ROS(reactive oxygen spieces)の産生の低下、ミトコンドリア膜電位低下の抑制に続きapoptosisが起こるが、これらはantioxidant N-acetyl-L-cysteine (NAC)の添加により抑制された。BCL6の強制発現は、ROSの産生低下とミトコンドリア膜電位の低下を抑制し、apoptosisを抑制しているものと考えられた。今後はアセチル化を含むタンパクの翻訳後修飾が、BCL6の様々な生物学的活性にどのような役割をはたしているのかを明らかにしていく予定である。
|