研究概要 |
1,再生不良性貧血(再不貧)のうちHLA-DR15を保有し末梢血中に微小なPNH形質の血球を有する例において、免疫抑制療法に対する反応性から自己免疫性造血障害の存在を確認した。これらの症例の血清を用いて巨核芽球性白血病細胞株UT7を間接蛍光抗体法で検討したところ、細胞質や核に対する抗体がみられた。再不貧患者の末梢血顆粒球のclonalityを検討したところ、主としてPNH血球陰性例にclonalityが確認された。 2,次にUT7の細胞溶解液と患者血清を用いてWestern blotを行ったところ、対照の健康者やPNH血球陰性例では見られないBandがPNH陽性例で複数確認された。 3,UT7のcDNAライブラリーを作成し抗体陽性例の血清にてスクリーニングしたところ複数のクローンが選択された。このうち多数の患者血清と反応するクローンのcDNA塩基配列を同定した。この塩基配列はDiazepam binding inhibitors(DBI)-related sequence-1(DRS-1)と同一であった。 4,レコンビナントDRS-1蛋白を用いてELISAを行ったところ、PNH血球陽性の再不貧例でのみ高い抗体価が示された。 5,定量PCRを用いてDRS-1のmRNAの発現を検討したところ、成熟白血球では発現レベルが低かったが、UT-7やCD34陽性の骨髄造血細胞では高かった。 6.このDRS-1のアミノ酸配列のうち、HLA-DRB1*1501と親和性の高いペプチドと低いペプチドをソフトウエアTEPITOPEを用いて検索した。再不貧患者のTリンパ球を抗原提示細胞とこれらのペプチドで刺激したのちにペプチドに反応するT細胞をELISPOTアッセイにて定量したところ、PNH血球陽性例において高親和性ペプチドに特異的なT細胞を多く見いだした。
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