研究概要 |
平成14年度の検討の結果,phosphatidylserine(PS),Ca^<2+>存在下でヒトプロトロンビン(hFII)とのみ結合するanti-PT#1は培養ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)におけるvascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1), intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1),およびE-selectinの培養上清内への発現を有意に亢進した(p<0.001,<0.001,&<0.005).この結果より,anti-PT#1は血管内皮に作用して各種接着分子の発現を亢進させ,これにより血管内皮-白血球の接着をきたし血栓形成を惹起する可能性が示唆された.そこで,平成15年度はwild-typeマウスおよびICAM-1 KOマウスに対しanti-PT#1を受動免疫させることにより実験的抗リン脂質抗体症侯群(APS)マウスを作成し,normal IgG投与マウスを対照群として,本実験マウスにおける血栓症形成・不育症に対するICAM-1の意義につき検討した. Anti-PT#1の受動免疫により,対照群と比較してWild-typeマウスおよびICAM-1 KOマウスとも有意の血小板数の減少,APTTの延長を認め(p<0.01&<0.01,p<0.01&<0.01,respectively),実験的APSマウスの作成に成功したと考えられた.両マウスの血小板数,APTTに有意差はみられなかった.一方,wild-typeマウスでは対照群と比較して胎児数・胎児体重の有意の減少が見られた(p<0.05&<0.05,respectively)ものの,ICAM-1 KOマウスでは有意の減少は認められなかった. 以上の結果より,抗リン脂質抗体症候群における血栓形成・不育症の発症には接着分子の果たす役割が重要であるものと考えられた.
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