研究概要 |
初期の血栓形成においてはGPIbとVWFとの相互作用が重要であり、三次元構造を保持した状態でのGPIbαとVWFの結合形式を検討することが必要である。我々はGPIbαのN末端フラグメントのC末端にFLAG-tagを付け、これをHEK293T細胞で発現/回収、これを抗FLAG抗体で固層化した後ラベルしたVWFとの結合性を評価した。128,172-175がVWF binding soteであることが確認され、4、6番目のleucine rich repeats domain (LRR) VWF bindingに重要であった。さらにこれをVWF-GPIba複合体の立体構造に当てはめた結果VWF Lys599の側鎖がGPIbaに向かって深く埋没していることが明らかになり、本研究においてノックイン作成をすすめてきたLys599の意義が明らかになった。VWFのGPIb結合部位にmutationを持つヒト疾患は知られていないので結合能欠如マウスが呈する表現型はヒト疾患からは予測できない。表現型解析によりGPIb結合部位としてのLys599の重要性を確認できると共に、血栓誘発により、血栓症発症におけるVWFの役割を明らかにすることができる。 129SVJマウスのゲノムライブラリー(STRATAGENE社製)からすでに明らかになっているマウスVWFのexon28(A1 domainをふくむ)のシークエンスをkeyにマウスVWFゲノム遺伝子のA1ドメインを含む断片を単離、得られたマウスVWF geneをもとにloxP配列によって囲まれたネオマイシン耐性遺伝子(MCl-neo)とジフテリア毒素Aフラグメント遺伝子(PGK-DTA)によるポジティブ・ネガティブセレクション用のターゲティングベクターを作成し、あわせてVWF当該領域(A1 domainに含まれる)に対してsite-directed mutagenesisを行ってK599Aのmutationを導入した。これをエレクトロポレーションによりES細胞(D3細胞)に導入、G-418により選択培養し、PCRおよびサザン解析して相同組換え体の単離・同定を行っている。得られたクローンはC57BL/6Jマウスより採取した胚盤胞に注入し、仮親の子宮に移植、生まれたキメラマウスをICRマウスと交配し、変異アレルの伝搬を調べてヘテロマウスを抽出する。これをCre-recombinaseを発現するCAG Cre mouseと交配させ、Cre-recombinaseによりloxP配列で挟まれたNeoR遺伝子がexcisionされたものをPCRによって選別した。
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