研究概要 |
腫瘍細胞で高発現しているWT1遺伝子産物(それはペプチドに断片化されclass I HLA分子とともに細胞表面に提示される)に対してより強力な反応性を持つCTLをより高い効率で誘導することを目的として,すでにHLA-A24.2拘束性にWT1特異的CTLを誘導できることが明らかになっている9merのWT1ペプチドの1つのanchor motif部位のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したものを合成し,その改変WT1ペプチドのWT1特異的CTL誘導能を検証した。その結果,N末側のanchor motif部位(第2位)のアミノ酸をMからYに置換したWT1改変ペプチドでHLA-A24.2を有するヒトのT細胞を刺激することにより,非改変(オリジナル)ペプチドで刺激するよりもより効率よくWT1特異的CTLをin vitroで誘導できることが明らかにされた。このWT1改変ペプチドは,より強力なペプチド癌ワクチンとなり得ることが示唆された。 平成13年12月に開始した造血器悪性疾患に対するWT1ペプチドワクチン第I相臨床試験の病例を蓄積することができた。その中に,WT1ペプチドワクチンが有効であったと考えられる病例(ワクチン投与後の骨髄や末梢血のWT1レベルの低下,骨髄の芽球の減少)を経験した。これにより,WT1ペプチド癌ワクチンが造血器悪性疾患の治療に有効であることが強く示唆された。 多くの造血器悪性疾患患者中でWT1タンパクに対する抗体が産生されていることが見い出され、この結果は、WT1タンパクが免疫原性を有していること、および、これらの患者中でWT1タンパクに対する免疫反応がすでに生じていることを意味している。これにより、WT1を標的とした癌免疫療法を目指すことの妥当性が示された。
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