WT1トランスジェニックマウス(lckプロモーター)を作製し、そのトランスジェニックマウスの骨髄、リンパ節、末梢血、脾臓、胸腺などを詳細に解析することにより、WT1の過剰発現がTリンパ球の分化を抑制することを明らかにした。分化の抑制は増殖の促進につながり、つまり、WT1の異常な発現がリンパ系細胞においてもそのトランスフォームに関与している可能性が示された。 平成14年度より続行しているWT1ペプチド癌ワクチン療法の第I相臨床試験において、有効症例、つまり、WT1ペプチドワクチン投与によって芽球の減少したMDS由来白血病症例や腫瘍マーカーの低下した肺癌症例を経験した。WT1ペプチドワクチンがヒトの悪性腫瘍の治療に有効であることが示された。 WT1を発現している腫瘍(白血病あるいは肺癌)の移植後にWT1ペプチドワクチンを投与してその腫瘍を拒絶するマウス実験系(従来の予防モデルではなく治療モデル)を確立した。その実験系でアジュバントとして用いたBCG-CWSは、ペプチド癌ワクチンと組み合わせることにより、その腫瘍拒絶能の増強に有効であることが示された。 頭頚部扁平上皮癌、甲状腺癌、大腸癌(腺癌)の多くの症例でWT1の発現が検出されることを明らかにした。今までにすでに白血病、肺癌、乳癌などでWT1の高発現が報告されていたが、これにより、WT1ペプチド癌ワクチンの適応疾患の拡大の可能性が示された。
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