白血病を含む多くの造血器悪性疾患(WT1を高発現)患者中にIgM型およびIgG型WT1抗体を検出した。これは、WT1タンパクが実際にこれらの患者中で免疫原性を有すること、および、患者中ではWT1タンパクに対する液性免疫反応だけではなく細胞性免疫反応(WT1抗体のクラススイッチを誘導する)が誘起されていることを意味する。また、これらのことは、WT1タンパクを標的とした癌免疫療法を推し進めることのrationaleとなる。 すでにヒトWT1特異的CTLを誘導することが示されている9merのWT1ペプチド(WT235)のひとつのアンカー部位(position 2)のアミノ酸をMからYに置換することにより、より強力にWT1特異的CTLを誘起できることを明らかにした。このペプチドはWT1ペプチド癌ウクチンの実際の臨床応用において非常に有用であると期待される。 WT1トランスジェニックマウス(lckプロモーター)においては、胸腺内のWT1が恒常的に過剰発現しているTリンパ系細胞の分化が抑制されることを示した。分化の抑制は増殖の促進やさらには発癌につながる可能性がある。これは、WT1がリンパ球の分化や増殖に関与していることを直接的に示したはじめての報告である。 WT1発現マウス白血病細胞株を移植されたマウスにWT1ペプチドをBCG-CWSと伴に投与することにより、その多くのマウスが白血病細胞を拒絶することを明らかにした。BCG-CWSのアジュバントとしての有用性を示すと伴に、WT1ペプチド癌ワクチンの「マウス治療モデル」を確立した。 基礎実験の結果をふまえて、MDSや白血病に対するWT1ペプチド癌ワクチンの第I相臨床試験を開始し、ワクチン投与により芽球の減少やWT1レベルの低下、つまりclinical responseのみられた症例を経験した。
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