研究概要 |
1)活性化変異Flt3の標的遺伝子の検索 Flt3活性化変異Flt3-ITDと野生型Flt3導入細胞のmRNAをDNA microchip解析にて比較検討した。Flt3-ITD特異的に発現亢進している遺伝子にはpim-2を初めとするSTAT3/5標的遺伝子が認められ、Flt3-ITD特異的コロニー形成能はpim-2の阻害によって抑制された。c-Kitの活性化変異体においてもpim-2およびSTAT3/5の標的遺伝子の発現が認められた。Pim-2はAML患者由来白血病細胞においてもFlt3-ITDの有無に関わらず発現の亢進が認められ、STAT3/5-Pim-2の経路はAMLの共通した腫瘍化シグナルとして機能している可能性が示唆された。一方骨髄系分化に必須の転写因子C/EBPalpha、PU.1はFlt3-ITD特異的に抑制されており、Flt3-ITDはSTAT3/5-Pim-2系により腫瘍性増殖を生じるとともに、正常分化の阻害を誘導することによって白血病発症を引き起こしている可能性が示唆された。 2)c-Kit、Flt3の活性化およびシグナル伝達機構の解析 Kinase領域変異型レセプターチロシンキナーゼは阻害剤治療に抵抗性を示し、その活性化機構の解明および阻害療法の開発が必要である。c-Kitのkinase領域変異型(c-KitAsp814val)においては、Tyr719のPhe置換によってp85 PI3-kinaseの結合が失われるだけでなく、キナーゼの活性化が著明に抑制され増殖阻害を生じた。一方Flt3のkinase領域変異体(Flt3Asp838Val)においてはTyr845,Tyr892,Tyr922をPheに変換することでキナーゼ活性の抑制、MAP kinase-STAT3/5シグナルの抑制、増殖・生存の抑制が認められた。以上よりkinase領域変異型の活性化は各レセプターチロシンキナーゼ特異的なチロシン残基により制御されていることが明らかとなった。
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