研究概要 |
サイトカインによって末梢血に動員された造血幹細胞が肝細胞に分化し得るかどうかを検討し、幹細胞を末梢血に動員する機序を解明し、動員に有効なサイトカインの組み合わせについて検討した。 GFPトランスジェニックマウスにG-CSF投与を行った後に末梢血よりLin-c-kit^+Sca-1^+CD34^+分画の細胞を、retrorsine及びCCl_4投与により作成した急性肝障害マウスに経門脈的に移植した。移植2ヵ月後に30%のマウス肝臓内においてGFP陽性細胞のclusterを認めた。次に、GFPトランスジェニックマウスのLin-c-kit^+Sca-1^+CD34^-分画の細胞を1個、致死量の放射線照射を施行したマウスに移植した。移植2ヵ月後に造血細胞がGFP(+)に置換されたマウスにretrorsine及びCCl_4投与し急性肝障害を作成した後G-CSF投与を行った。その2ヵ月後にB6マウス肝臓内において中心静脈を中心に、GFP陽性細胞のclusterを認めた(Blood 102:336a、2003)。 Ly5.1マウスにG-CSF、可溶性c-kit受容体(s-kit)を単独または組み合わせて投与した後、マウス末梢血Lin-単核球をLy5.2マウスに移植した。移植6ヶ月後に、レシピエントマウスLy5.2の末梢血中にLy5.1陽性細胞力が見られた。また、G-CSF単独より、G-CSF+s-kit投与Ly5.1マウス末梢血を単核球移植した群が、ドナー由来のLy5.1陽性細胞の%が有意に高かった(Exp.Hematol 32:390-396,2004)。 造血幹細胞はサイトカイン投与により骨髄微小環境との接着を阻害され、末梢血中に出現する。また、その造血幹細胞分画には肝細胞に分化しうる細胞が存在し、造血幹細胞を末梢血に動員することができるサイトカイン投与は、再生医療にも有効な手段である可能性が示唆された。
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