マウス造血幹細胞は骨髄中ではCD34^-であり、G-CSFにより末梢血に動員された造血幹細胞はCD34^+であることを見出した。また、骨髄中の造血幹細胞は接着因子の阻害により機械的に末梢血に動員される可能性があることを、c-kit-SCF結合を阻害する可溶性c-kit投与が末梢血に造血幹細胞を動員することにより明らかにした。これらの基礎的検討をもとに、急性肝不全において、造血幹細胞はG-CSFによって、肝細胞に分化する能力を失うことなく末梢血に動員され、壊死に陥った肝臓内に動員され肝細胞に分化することをクローナルなレベルで証明し、造血幹細胞移植またはG-CSF投与が急性肝不全の治療になる可能性を示唆した。 はじめに、GFP発現マウス(C57BL/6Tg(act-EGFP)Osb1)の骨髄よりLin^-細胞をビーズ法によって分離し、さらに一個のc-kit^+Sca-1^+CD34^-細胞をフローサイトメトリー法にて分離し、致死量の放射線照射を行った正常マウス(GFP^-)に移植した。2ヵ月後、GFP^+の血液細胞を持つキメラマウスとなった。このマウスに四塩化炭素およびレトロルシン処理後、G-CSFを投与し、2ヵ月後に肝臓内にGFP陽性肝細胞が再生されているかを検討した。次にGFP発現マウスにG-CSFを投与し、一個のマウス末梢血Lin^- c-kit^+Sca-1^+CD34^+細胞を分離し、この細胞を四塩化炭素およびレトロルシン処理後急性肝不全マウス(GFP^-)に、経脾経門脈的に移植し、2ヶ月後にマウス肝臓にGFP陽性肝細胞を再生し得るか否かを検討した。 結果は、これらの造血幹細胞分画に属する一個の細胞が、放射線照射マウスの造血を再構築するとともに、急性肝不全マウスの肝細胞を再生した。また、自己の骨髄細胞から障害された肝組織に造血幹細胞が動員され肝細胞を再構築した。
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