研究概要 |
我々はヒト造血器腫瘍において転写因子Ikarosの解析を行い、慢性骨髄性白血病(CML)急性転化でIkarosのdominant-negative isoformであるIk-6の過剰発現を17例中5例に確認し報告している。慢性期の症例にはIkarosのdominant-negative isoformが認められなかったことより、CML急性転化進展に転写因子Ikarosの関与が示唆される。またB細胞性急性リンパ性白血病症例の解析においても41例中14例にdominant-negative isoformの過剰発現を報告している。この結果はヒトにおいてIkarosが癌抑制遺伝子として機能している可能性を示唆するものである。 レトロウイルスを用いたマウス骨髄移植モデルにより、ベクター(pMX/GFP or MSCV/NGFR)またはIk-6(pMX/Ik-6/GFP or MSCV/Ik-6/NGFR)を導入し、両群の生存率を比較した。Ik-6群は骨髄移植後約3ヶ月頃より白血病を次々と発症したが、ベクター群には著変を認めなかった。白血病を発症したマウスの末梢血には核小体明瞭な腫瘍細胞が出現し、肝脾腫、リンパ節腫脹、胸腺腫を認めた。腫瘍細胞の表面マーカーを解析したところ、主としてCD4+CD8+T細胞であった。 以上の結果により、我々が造血器腫瘍において報告したIk-6過剰発現は、単独でも白血病を発症しうることが明らかとなった。したがって、Ik-6は格好の治療標的ならびにminimal residual diseaseのマーカーとなる可能性があり、臨床的に非常に興味深い。 現在は、同様の解析をbcr/ablトランスジェニックマウスを用いて、CML急性転化のモデルとして解析を行っている。将来的には,taxトランスジェニックマウスでATLL発症のメカニズムについても検討を行う予定である。
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