CD27は記憶B細胞のマーカーであるが、そのリガンドであるCD70からの刺激は形質細胞への分化に重要である。正常骨髄形質細胞はCD27陽性であるが、多発性骨髄腫患者の骨髄形質細胞(骨髄腫細胞)は、その病期の進行に伴ってCD27陽性細胞の割合が減少する。CD27の細胞質内領域にproapoptotic proteinであるSivaが結合することでアポトーシスが誘導されるという報告から、形質細胞の腫瘍化にはCD27の発現低下が関係するものと考え下記の解析を行った。CD27の発現を認めない骨髄腫細胞株にCD27を移入し強発現させ、同様にCD70を発現させたNIH3T3細胞と共培養しアポトーシスが誘導できるか、さらにそれによる遺伝子変化をcDNA microarray (Human Apoptosis CHIP)で解析した。またCD27を強発現させた骨髄腫細胞株においてCD27とSivaとの結合をIP/Westernで解析した。CD27の強発現骨髄腫細胞はCD70の刺激によりアポトーシスを誘導できなかった。またCD27とSivaの結合を確認できなかった。さらにcDNA microarrayではアポトーシスの誘導に関係する遺伝子の発現増加は認めなかったが、大腸癌や脳腫瘍の発生に関係すると報告のあるectodermal neural cortex (ENC1)遺伝子の発現増加を認めた。これらのことから骨髄腫細胞株においてCD27-CD70の結合によるアポトーシスの誘導は証明できなかったが、CD27の発現欠損が形質細胞の腫瘍化に関わっている可能性を示唆するものである。
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