研究概要 |
1.膿胸関連リンパ腫は慢性炎症を基盤に発症するユニークなリンパ腫で、ほぼ全例にEpstein-Barrウイルス(EBV)が感染している。しかしながら、このリンパ腫細胞におけるEBVの感染形態様式は明らかにされていなかった。我々はEBVが膿胸関連リンパ腫細胞の染色体に組み込まれて存在し得ることを見い出し、さらに細胞株の樹立に成功した(Br.J.Haematol.,117:546,2002)。EBVが組み込まれた染色体には染色体不安定性(chromosomal instability)が起きている可能性が示唆された。また本細胞株はB細胞性由来にもかかわらず、一般的なT細胞性抗原であるCD2が発現されており、このような現象が膿胸関連リンパ腫において、特徴的にみられるのか現在検討中である。 2.様々な疾患におけるウイルス感染、特にヒトヘルペス属ウイルスについて検討した。この中で成人発症スチル病において、その発症にヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が関与している可能性について初めて報告した(Am.J.Med.113:532,2002)。また血液造血器腫瘍患者の化学療法後における免疫抑制状態において、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が再活性化し、重篤な病態を引き起こすことが知られているが、我々はHIV陰性悪性リンパ腫患者に発生した進行性多巣性白質脳症の病変部にHHV-6のゲノムを確認し、詳細に報告した。
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