研究概要 |
1.最近、VilchezらはPCRを用いて、非ホジキンリンパ腫の42%にsimian virus 40(SV-40)特異的DNA配列を検出したが、良性リンパ組織、リンパ腫以外の癌組織には一例も検出されなかったと報告した(Lancet 359:817,2002)。またShivapurkarらも非ホジキンリンパ腫の43%、またホジキンリンパ腫の10%にSV-40特異的配列を検出している(Lancet 359:851,2002)。SV-40が一部のリンパ腫の発生・病態に関与している可能性が示唆された。そこで我々は我が国におけるリンパ増殖性疾患とSV-40の関連について検討した。178例の悪性リンパ腫・リンパ性白血病についてSV-40ゲノムの有無をPCRで調べたところ、3例(1.7%)にSV-40が検出された。内訳は39例のdiffuse large B-cell lymphoma中1例、10例のfollicular lymphoma中1例、16例のB細胞性慢性リンパ性白血病中1例にSV-40が検出された。我が国のリンパ増殖性疾患におけるSV-40の関与は少ないものと考えられた(Bri.J.Haematol.,121:190,2003)。 2.様々な疾患、特に血液造血器疾患におけるウイルス感染について検討した。Epstein-Barrウイルス(EBV)は日本人胃癌の約7%において感染が認められることが報告されている。我々は胃癌と成人T細胞性白血病/リンパ腫を同時に発症した症例で、双方の組織にEBVの存在を確認した。このような報告はこれまでになく、EBVによるリンパ系腫瘍と固形腫瘍双方のpathogenesisを考える上で貴重な症例であった(Am.J.Med.114:509,2003)。また赤芽球ろうの発症あるいはその病態の修飾にEBV活性化の関与が示唆され、報告した(Int.J.Hematol.77:354,2003)。またEBV等のウイルスは検出されなかったが、T細胞性large granular lymphocyte leukemiaの経過における遺伝子発現パターンの変化について詳細に検討し、報告した(Int.J Cancer 108:845,2004)。
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