研究概要 |
再生不良性貧血(AA)は、多能性造血幹細胞の減少に起因し、骨髄の低形成と末梢血の汎血球減少を特徴とする血液難病である。その病態発生機序は、免疫抑制療法が有効であるなどの臨床的事実などから免疫機序による造血細胞傷害が想定されている。実際,免疫抑制療法によりAAの予後は著しく改善した。しかし、治療が奏功した長期生存例の中に、発作性夜間血色素尿症(PNH)、骨髄異形性症候群(MDS)、急性白血病などのクローン性疾患が晩発する例が少なからず存在することが明らかになり、この晩発疾患が臨床上大きな問題となっている。一方、AAと共にPNHとMDSも致死的造血不全をし、白血病への進展も共通の特徴とする。我々はPNH患者に変異細胞が発生しやすい病的造血環境を想定し、実際に、hypoxanthine-guanine phosphoribosyl transferase (HPRT)遺伝子の変異を指標に、高変異率や自然発生と違う変異スペクトラムを示し、これを実証した。このような背景で、AAでも変異クローンを発生しやすい造血環境が存在することを明らかにす蒼目的で本研究を企画した。 14年度は、AA患者におけるクローン性疾患の有無を検討するために、末梢血顆粒球および赤血球におけるGPIアンカー蛋白(CD55,CD59)の発現を検索しPNHクローンの有無を、骨髄細胞の核型および形態によりMDSクローンの有無を検討した。検索したAA患者ではPNHおよびMDSクローンは検出されなかった。続いて、HPRT遺伝子変異頻度検出のためのアッセイ法を確立した、患者末梢血より単核細胞面分を得、6-thioguanine(6-TG)を含む選択培地中でT細胞を単クローン性に培養し、2週間後6-TG耐性コロニーを得た。6-TG非含有培地でのクローニング効率と比較し、末梢血T細胞におけるHPRT変異頻度を算出した。結果、AAでは健常人に比し約2倍の変異頻度を示した。 今後、さらに検討する症例数を増やし、6-TG耐性コロニーよりmRNAを抽出し塩基配列を決定することにより変異を同定する予定である。
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