我々は血清nm23-H1が、急性骨髄性白血病および悪性リンパ腫で新しい優れた予後不良因子となることを報告してきた。しかし、悪性リンパ腫における血中nm23-H1蛋白の機能については不明な点が多い。今年度は、リンパ腫細胞におけるnm23-H1蛋白発現とその細胞内局在を明らかにした。1.リンパ腫細胞表面のnm23-H1をflow cytometry法で測定した。その結果、108例中28例(25.9%)に20%以上の細胞表面nm23-H1の発現を認め、特に末梢T細胞性リンパ腫NK/T細胞リンパ腫で高い発現を認めた。血清nm23-H1と細胞表面nm23-H1の間に有意な相関を認め、細胞表面nm23-H1発現が高い症例では生存率が有意に低率であった。以上より細胞表面nm23-H1も血清nm23-H1同様非ホジキンリンパ腫の治療戦略を考える上で、有用な予後因子となりうる可能性が示唆された。2.次にNKリンパ腫(NK-NHL)における予後因子になりうるかどうか検討し、同時に治療経過の血中nm23-H1を検討した。NK-NHL60例を対象としたが、血中nm23-H1は正常対照に比しNK-NHLでは有意に高値であった。血中nm23-H1は進行病期、IPI高値、および非寛解例で高値であった。また、nm23-H1高値症例は低値症例に比し生存期間が有意に短かった。治療後完全寛解となった症例では、nm23-H1はすみやかに低下した。現在リンパ腫症例の組織標本を使いnm23-H1の免疫組織化学的検索を行い、TIA-1およびgranzyme Bなどの細胞障害性顆粒関連分子との関係を検討している。非ホジキンリンパ腫の治療方法は現在国際予後分類により選択されているが、nm23-H1蛋白がそれに代わる新たな予後因子となる可能性があり、また機能解析を行うことにより新たな治療戦略の開発が期待される。
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