血清nm23-H1が非ホジキンリンパ腫の予後因子であることを報告してきたが、今後はリンパ腫細胞におけるnm23-H1蛋白発現とその細胞内局在を明らかにし、悪性リンパ腫におけるnm23-H1の機能を解析する必要がある。今年度は、免疫組織化学染色によりリンパ腫細胞におけるnm23-H1蛋白発現とその細胞内局在を明らかにした。1.T細胞性リンパ腫症例の組織標本を使いnm23-H1の免疫組織化学的検索を行い、TIA-1およびgranzyme Bなどの細胞障害性顆粒関連分子との関係を検討した。137例中nm-23 36.5%、TIA-1 78.1%、granzyme B 32.8%が陽性であった。末梢性T細胞性リンパ腫81例についてnm23-H1の発現について検討したが、bulky massを有する症例、B症状を有する症例、完全寛解とならなかった症例で有意にnm23-H1が高発現していた。生存率に関しての検討では、nm23-H1が陽性であった症例は陰性であった症例に比し、有意に予後不良であった。次にnm23-H1とTIA-1を組み合わて検討したが、両者が陽性の症例が、どちらか一方が陽性の症例より有意に予後不良であった。そのため、この2つのマーカーを組み合わせて予後を判定することは、治療戦略を考える上でも有用と考えられた。2.瀰漫性大細胞型B細胞性リンパ腫についても免疫組織化学染色によるnm23-H1発現と血清nm23-H1レベルの相関を検討するとともに、細胞質内nm23-H1も予後因子となりうるかどうかを検討した。その結果、細胞質内nm23-H1と血清nm23-H1が相関することがわかり、血清nm23-H1の一部はリンパ腫細胞から産生されている可能性が示唆された。3.現在、リンパ腫症例のリンパ節およびリンパ組織からRNAを取り出しRT-PCR法によりnm23-H1発現を定量的に検討している。
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