研究概要 |
1.同種造血幹細胞移植後の患者末梢血リンパ球からの同種抗原特異的T細胞の樹立 慶應義塾大学病院血液内科並びに国立がんセンターにおいて血縁者間造血幹細胞移植を施行した症例39例を解析した。この結果、移植前患者血液細胞に特異的に反応するドナー由来リンパ球が13例において誘導できた。しかしいずれも詳細の解析には至らなかった。13例中1例にDPB1^*0303拘束性にマイナー組織適合抗原を認畿すると思われるCD4陽性T細胞が誘導された。IFN-γELISA assayならびにCr release assayにより、この細胞が患者血液細胞のみを特異的に認識することがわかった。さらにDPB1^*0303陽性の同種EBV-LCL並びに腫瘍細胞を認識し、DPB1^*0303陰性の各種細胞を認識しない事を確認した。しかしこの抗原の同定には至っていない。また別の2例ではHLA-class IIのミスマッチを認識するCD4陽性T細胞が誘導された。 2.血液細胞に特異的発現をする遺伝子の日本人集団における遺伝子多型の検出と頻度解析 東大医化学研究所のSNPのデータベースにて、CD抗原を中心とした血液細胞に特異的に発現する分子のcording SNPを検索し、27の候補部位を選択した。 3.血液細胞特異的分子の多型のGVHD及びGVLにおける意義の検討 Proteinase3のエクソン3に存在するSNPに焦点を絞り,この部分を含む12個のペプチドを合成,精製した。このペプチドが同種抗原となりうるホモの健常人の末梢血より樹状細胞を誘導し、これを用いて同種抗原反応性T細胞の樹立を試みているところである。 また慶應義塾病院血液内科において血縁者間造血幹細胞移植を施行された35例につきこの部分のSNPを解析したところ、7例でGVH方向のミスマッチを有するペアを認めた。これらのうち,5例は寛解にて生存,Grade III以上の重篤なGVHDを起こした症例は認めなかった。再発死亡した症例が一例存在した。症例数が少ないため、統計的解析には至っていない。今後もGVHDを起こさずGVLを惹起しうる抗原としてproteinase3のSNP部分の解析を続けていく予定である。
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