GFPを組み込んだricombinant EBウイルスをヒトNK細胞株および健常人より分離したNK細胞に感染させると、NK細胞株の約30%、ヒト末梢血NK細胞の40-60%においてGFPの発現が認められた。これらの感染細胞は巨大化し、一部の細胞は多核となった。共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析でcdc2、cyclin B、cdc25C等のG2/M移行に重要な細胞周期関連蛋白質の発現量の増加と核への移行が観察された。これらの変化に加えてcdc2、cdc25Cの活性化による泳動度の変化がWestern blottingで認められ、細胞がG2/M移行期に存在することが示唆された。更に、flow cytometryによる細胞(周期分布の検討からEBV感染後のG2/M期停止が確認された。一部にDNA量が4Nより多い細胞が認められ、G2/M期停止から逸脱して多核になった感染細胞を示すと考えられた。PML、SC35、HP1等のnuclear dotを形成する蛋白質群の核内分布パターンの変化は明らかではなかったが、GFP陽性の巨大化細胞ではactinおよびα-tubulinによる細胞骨格が著明に変化しており、多核の細胞では中心体の数の異常も認められた。核の構造蛋白質と考えられるlamin A/Cやlamin Bの染色像から多核の一部が、laminを介して繋がっている像も得られた。nocodazoleを用いてEBV感染後のNK細胞をM期で止めると多核の細胞が減少してM期のアポトーシスが多く認められるようになった。以上より、この感染実験の過程において巨大化し多核となった感染細胞では、S期からG2をへてM期に至る細胞周期の制御が破綻していることが予想される。また、EBV感染後の多核細胞の出現は、細胞融合ではなくM期制御の破綻によることが強く示唆された。
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