研究概要 |
GFPを組み込んだEBウイルス(EBV)をヒトNK細胞株および健常人由来のNK細胞に感染させると、40-60%の細胞においてGFPの発現が認められ、EBV関連遺伝子の転写産物もRT-PCR法で検出された。これにより、EBVがNK細胞に感染することがin vitroで初めて明確にされた。それぞれ潜伏感染および溶解感染のマーカーであるEBERsおよびBHLFsをプローブにしてin situハイブリダイゼーションを行うと、EBV感染48時間後には両方の感染様式が混在していた。溶解感染NK細胞は円形であるのに対して、潜伏感染細胞は変形・巨大化し、その一部は多核であった。このような変形細胞において共焦点レーザー顕微鏡でG2/M移行に重要な役割を果たすCdc2、Cyclin Bの発現量の増加と核への移行が観察された。Western blot解析でもCdc2、Cyclin Bの発現量の増加およびCdc2の泳動度の変化が認められ、G2期停止が示唆された。Flow cytometryによる細胞周期分布の検討からEBV感染後のG2期停止とともに,これから逸脱してDNA量が4N以上となった多核のNK細胞の存在が示された。変形・巨大化した潜伏感染細胞では、actin、α-tubulin等の細胞骨格蛋白質の分布が著明に変化しており、中心体の数の異常も認められた。72時間後にはこれらの細胞の大部分は初期のアポトーシスに進むことがannexin Vとの結合で明らかとなった。EBV感染からクローン化までのEBV関連遺伝子の発現パターンにおいて、NK細胞はT細胞と類似し、不死化されるB細胞とは異なっていた。これらの結果から、EBV感染により大部分のNK細胞はアポトーシスで死滅するが、一部生き残ったものはEBVにより細胞周期制御・細胞形態の異常を付与され、悪性度の高い腫瘍形成に繋がる事が予想された。
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