研究概要 |
平成14年度の本プロジェクトは,概ね予定通りに実施・遂行された。 ビタミンK2(以下VK2)とビタミンD3(以下D3)との同時添加により,HL-60細胞株の単球系への分化誘導は著しく増強し,かつ,分化誘導に連動して,種々のアポトーシス誘導に対して耐性化を獲得することが明かとなった。また,この機序の一つとしては,単球系への分化に伴い,CDK inhibitorの一つであるp21CIP1が核から細胞質し移行し,アポトーシスのシグナルにおけるJNK pathwayの上流に位置するASK1との会合により,そのアポトーシスシグナルをブロックするためと考えられた。この,分化誘導に伴う,アポトーシス耐性化の誘導は,無効造血(アポトーシス)により血球減少を来している骨髄異形成症候群(MDS)不応性貧血(RA)の改善にも有用であることが予想される。 また,VK2は,骨髄内微小環境を構成するストローマ細胞からのTNF-αの産生を抑制することも明かとなり、これにより造血支持能が改善する傾向を示した。現在その詳細を検討中である。 さらに,feline leukemia virus (FLV)感染によるネコのMDSモデルが完成し,現在VK2投与群と非投与群の2群間における,生存期間ならびに急性白血病移行率に関して現在検討中である。 厚生労働省「骨髄異形成症候群に対する新規治療法の開発に関する研究」班(班長 平井久丸)の支援により,MRS RAを対象とした臨床研究「骨髄異形成症候群 不応性貧血におけるビタミンK2単独療法ならびにビタミンK2とD3併用療法の有効性に関する検討」を立案した。本臨床研究は平成14年11月より実施されている。 DNA microarreyによる遺伝子発現プロファイリンに関しては,白血病細胞株をVK2ならびにD3で処理後,コントロールとの遺伝子発現プロファイリンの相違を検討中であり,臨床検体を対象とするための予備実験段階にある。
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