造血幹細胞の培養から巨核球選択的な培養システムの構築と、巨核球系細胞株から血小板様粒子を産生する系を確立することを目指した。 造血幹細胞の増幅系では、ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を、ヒト骨髄ストロマ細胞、あるいはテロメラーゼ遺伝子を導入し不死化したストロマ細胞上でサイトカイン(TPO、FL、SCF)と共に培養することで、2〜7週間にわたり安定して増幅された。また造血幹細胞アッセイ系(NOD/SCIDマウスヘの移植系)で幹細胞の増幅も確認できた。テロメラーゼ遺伝子を導入し不死化したストロマ細胞では細胞膜の糖鎖構造にも変化が生じることも明らかになった。ストロマ細胞を生きたまま利用するのではなく、物質として利用するため固定化方法を検討した。グルタルアルデヒド固定でストロマ細胞としての支持能の一部が代替えできたが、パラホルムアルデヒドやアルコール固定では機能が失われた。ストロマ細胞から機能分子を精製するため、ストロマ細胞の膜成分を分子量に基づき分画中である。 培養系を無血清系で実施すると、CD61陽性の巨核球系細胞の頻度が高まった。これは血清中に存在するTGF-βが巨核球造血を抑制するという従来の報告を確認する成績である。しかしマウスの系で顕著に認められる、巨核球の成熟指標の一つ、胞体突起形成や血小板放出はヒト臍帯血を用いた培養系では現時点では乏しい印象である。巨核球系細胞株を用いた検討では、この株細胞が1〜2ミクロンサイズの血小板様粒子を多数産生することを再現できた。粒子の精製を進め性質を明らかにしていく予定である。
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