HOX遺伝子群の、MLL遺伝子、及び融合した変異体MLL-AF9遺伝子を、テトラサイクリン反応性プロモーターの下流につないだコンストラクトを作成した。このコンストラクトでは、遺伝子の下流に、internal ribosomal entry site(IRES)でつないだEnhanced GFPの遺伝子が挿入済みなので、GFP遺伝子の発現を調べることで、容易に導入細胞を識別できる。そこでMLL-AF9遺伝子のコンストラクトを、申請者がすでに樹立した親株ES細胞に導入しGFPの発現がテトラサイクリンによって厳格にコントロールされているクローンを樹立した。次に、ES細胞の試験管内分化法を用いて、血液細胞とその前駆細胞である中胚葉細胞を解析する新しいシステムの構築を行った。中胚葉系細胞の適切なマーカーとしてPDGFRα、FLK1をそれぞれ細胞表面マーカーとして抗体染色法にてソーティングを行いそれぞれの単独陽性細胞を分離し、分化能と遺伝子発現を解析した。その結果、PDGFRα陽性、E-cad弱陽性、FLK1陰性の分画が沿軸中胚葉に、PDGFRα陰性、E-cad陰性、FLK1陽性分画が側板中胚葉に、相当することが示唆された。また、goosecoid遺伝子にGFP遺伝子をKnock-inしたES細胞を樹立した。このES細胞では、GFPの発現がgoosecoidの発現を反映することが明らかとなった。このES細胞を用いてきわめて効率にgoosecoid陽性細胞へ分化させる条件を無血清培地を用いて確立した。これら技術は中胚葉細胞の分化を解析する新しいツールとなりえるだけでなく、その子孫細胞である血液細胞の分化と白血病の解析に応用可能である。
|