研究概要 |
ダイオキシン汚染に見舞われたベトナム南部では北部(ハノイ市近郊)に比べ、慢性骨髄性白血病(CML)患者の平均生存期間が著しく短い(13.1±11.6ヶ月vs. 31.5±7.1ヶ月)との予備データがある。そこで、この原因を探るべく、ホーチミン市医科薬科大学血液輸血病院でCMLと診断された47症例のCML患者について、染色体分析・FISH・RT-PCRを行った。その結果、Ph陰性例は4/47例(8.3%)であり、この内、2/4例は所謂、Ph陰性BCR/ABL陰性CML、残り2例Ph陰性BCR/ABL陽性CMLであった。 RT-PCR法では、34/47(72.3%)がmajor BCR/ABL陽性であり、この内、2例はmajor, minor BCR/ABL陽性であった。 染色体分析では、診断時症例9/10例、慢性期治療中症例20/37例にPh転座以外の付加的染色体異常が検出された。しかし、これらの付加的染色体異常は従来、報告されているdouble Ph染色体,+8,iso(17q),+19,+21などとは全く異なる異常(1p,3p,6p,7p,10p,11p,trisomy 13,partial 13など)であった。 FISH解析では11/47(23.4%)例において、der(9)上のABL遺伝子欠失が観察され、5例においては2種類のクローンが存在していることが判明した。der(9)欠失の頻度は欧米諸国(9-15%)に比べ、かなり高い。また、これまでの報告では「der(9)欠失はPh転座と同時に生じる」とされていたが、治療中の症例に2種類のクローンが存在し、しかも、その割合が臨床時期により、変わって来ていることから、der(9)欠失クローンはPh転座が生じた後に生じた可能性が高いと考えられるこれらの結果より、同国のCML症例ではgenomic instabilityが亢進している可能性があると考えられる。
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