cAMP応答エレメント(CRE)の活性を制御しているcAMP応答エレメント結合蛋白(CREB)/活性転写因子(ATF)ファミリー蛋白群の血液細胞における機能はまだ理解されていない。この点を明らかにするために、レチノイン酸刺激により食細胞へと分化するヒト単球芽細胞株を用いて、ここにdominant negative CREB(以下dn-CREB)を強制発現させることでCREB/ATFファミリー蛋白群の機能を阻害した際に、増殖・分化・死がどのような影響を受けるかを解析した。特に分化に関しては1)細胞接着能、2)活性酸素産生能、3)細胞形態変化、4)細胞増殖ブロックの4つの点から検討した。その結果、dn-CREBを発現させることで未分化時の増殖速度は顕著に低下すること、しかし生存性は影響を受けないことが解った。またレチノイン酸刺激による分化の際にはdo-CREBの発現により1)細胞接着能、接着因子CD11bの発現、CD11bの発現を調節する転写因子PU.1の発現が低下し、2)活性酸素産生能、活性酸素産生酵素のコンポーネントであるp67^<phox>、p47^<phox>の発現、これらの発現を調節するPU.1の誘導が低下することが明らかとなった。しかし3)分化に伴う細胞形態変化(核のくびれ、細胞質内空胞の形成)は促進され、4)分化に伴う増殖ブロックは影響を受けないことが示された。以上、ヒト血液細胞においてCREからの転写は1)未分化時の細胞増殖を促進し(生存性には影響せず)、2)分化に伴う細胞接着性および活性酸素産生能の獲得に必須の役割を果たし、3)分化に伴う細胞の形態変化は抑制し、4)分化に伴う増殖ブロックには影響を与えないことが明らかとなった。
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