研究概要 |
高血圧性腎不全動物モデルラットを非運動群と中等度運動群に分け、運動群をさらに、薬物非投与群とアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬エナラプリル、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ロサルタンなどの各種降圧薬持続投与群に分け、4週後に断頭し検討した。その結果、各種降圧薬は、運動の蛋白尿減少作用や腎糸球体硬化指数増加抑制などの腎保護作用をさらに増強することが明らかになった。以上のように、本研究において高血圧性腎不全動物モデルを用い、長期的運動の影響を解析した結果、1)強度の運動負荷によっても腎機能は悪化せず,むしろ腎機能を保護する方向に働く可能性が初めて示唆され、腎機能障害を有する場合にも、長期的に運動療法が有効である可能性が腎組織学的にも示された。また、2)長期的運動負荷による降圧作用,脂質代謝の改善作用が高血圧腎不全モデルの腎保護作用にも寄与している可能性が示唆された。さらに、3)各種降圧薬は運動の腎保護作用を増強することが明らかになった。同様な結果をWistar-Kyoto腎不全動物モデルラットやアドリアマイシンネフローゼモデルラットでも確認した。 従来から腎障害患者に対しては、一律に運動を制限する傾向にあった。過激な運動によって腎障害が急速に悪化した例は少なくないが、運動制限のもたらす精神的;身体的マイナス面はさらに計り知れないものがある。廃用症候群に陥った血液透析患者に対する適切な運動療法は,自覚症状の改善とQOLの向上に有用である。さらに、われわれの腎不全動物モデルの結果から血液透析にいたらない腎不全でも運動療法が有効である可能性が示唆される。
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