研究概要 |
1.アクチニン-4のネフローゼ惹起物質PAN結合性(Nephron Exp Nephrol,2003) 哺乳動物腎からアクチン結合能を保持した機能性アクチニン-4を精製する方法を初めて確立した。精製したアクチニン-4はネフローゼ惹起物質PANに強く結合することを見出した。アクチニン-4を酵素処理して得られたフラグメントの分析から、PAN結合部位を中心部スペクトリン様リピートにマップした。PANのネフローゼ惹起作用の一つとして、アクチニン-4スペクトリン様リピートに結合し、その機能を障害する可能性が考えられた。 2.非家族性ネフローゼ症候群症例におけるアクチニン-4、ポドシンの遺伝子異常の検討(Ren Fail,2003) 非家族性ネフローゼ症候群を呈し慢性腎不全に陥った巣状糸球体硬化症5例の末梢血単核球からmRNAを抽出してcDNAを合成した。アクチニン-4とポドシンに特異的なプライマーでPCRを行い、その産物のシークエンス解析を行った。いずれもアミノ酸置換を伴う遺伝子異常は認めず、孤発性巣状糸球体硬化症の原因は多岐にわたると考えられた。 3.アクチニン-4とヒューマニンとの相互作用(Clin Exp Nephrol,2004) アクチニン-4スペクトリン様リピートと相互作用する腎内在性分子をtwo-hybrid法で検索し、アポトーシス抑制ペプチドとして最近発見されたヒューマニンを同定した。レコンビナント分子と合成ペプチドを用いた系でもその結合性が確認された。ヒューマニンを発現させた培養細胞でアクチニンとの共局在を認めた。これらの相互作用と共局在にPANは影響を与えなかった。In situ hybridization法と免疫電顕法により、ヒューマニンの糸球体上皮細胞内発現を観察した。ヒューマニンはアクチニン-4スペクトリン様リピートの新規結合因子であり、その結合にPANは競合しないと考えられた。
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